歩く・登る・走る旅イメージ
歩く・登る・走る旅/#03
息を切らす 標高が上がる 景色が変わる
粟ヶ岳へ向かう女性たち01
神秘に満ちた、天空の森をめざして
粟ヶ岳へ向かう女性たち02
なんど登っても 尽きせぬ魅力
あざやかな茶園の合間を通り抜け、掛川市東山地区のシンボル「粟ヶ岳」に着いた。 週末はハイキングやサイクリング客でにぎわっている。登山のスタート&ゴール地点となる麓の休憩所 「東山いっぷく処」には、無料駐車場とサイクルラックが完備され、山歩きを楽しむトレッキングや、 ロードバイクで登坂タイムを競うヒルクライムには好都合なのだ。標高532mのほどよい高さも人気の秘訣だろう。

粟ヶ岳には名前と登頂回数を記帳できる「登山ノート」がある。中を見れば、まずおどろく。 1000回以上登山した人、自転車で一日7往復した人、毎月登りに来るグループと、リピーターが多い。 それほど魅力的なのだろう。
立ち漕ぎするロードバイカー
山頂を目指し歩き出す。隣をロードバイカーたちがダンシング(立ち漕ぎ) で駆け抜けていく。しばらくすると、桜並木が見えてきた。春の陽光に照らされた、 まぶしい桜の優雅な姿を思う。眼下には、たおやかに波打つ茶園が広がっている。高度で移り変わる世界農業遺産に選ばれた 秀逸な景観は、粟ヶ岳登頂の醍醐味の一つ。
眼下に波打つ茶園
さらに登ると、道端でカモシカに出会った。地元民の話では、多いときは日に三度会うこともあるとか。 希少な自然が保たれている東山地区ならではの、うれしいハプニングである。
登頂まで1時間。汗を流した後の山頂からの眺望は喜びもひとしお。遠州灘と富士山を望む絶景に、しばし感嘆する。
カモシカ
山頂からの眺望

山頂の阿波々神社に参拝した後に必ず寄りたいのが、原生林が生い茂る神秘的な森。 「鎮守の森」と呼ばれるこの森には、神が降り立ったと伝わる巨石群「磐座」が鎮座している。 苔に覆われた巨石と原生林があやなす光景には言葉を奪われる美しさがあり、雲が降りてくる日は幻想的ですらある。 湿った草木の匂い。深く息を吸い込むと、体の内で何かが癒されていくのを感じる。
ロードバイカーたち
晴れやかな気分で下山しながら、次はいつ来ようかと考えていた。
知るほど楽しい、東山の魅力タイトル
粟ヶ岳登山口の駐車場と駐輪場
粟ヶ岳登山のスタート&ゴール地点となる休憩所「東山いっぷく処」 には、無料駐車場とサイクルラックを完備。おいしいお茶もふるまってくれる。 登山回数と名前を記帳できる「登山ノート」もここに。 店員は地元民なので、周辺の見どころなども教えてくれる。
阿波々神社とパワースポット
粟ヶ岳山頂の阿波々神社は、天平8年(736年)に創設された由緒ある社。 社殿の左奥には「無間の井戸」があり、「どんな欲望も叶える」とされた 「無間の鐘」を沈めたという伝説がある。
神聖な空気に満ちた磐座のある「鎮主の森」は、幹周1m以上の大木が200本以上ある県の天然 記念物。御神木のスギは高さ33m、直径3.3m。森全体が東山のパワースポットとなっている。
鎮守の森の御親睦
世界に一つだけのお茶
その美味しさを、未来へ
 芳醇な香りと、心地よい余韻を残す深い味わい。世界農業遺産に認定された「静岡の茶草場農法」で つくられたお茶は、日本一に値する農林水産大臣賞をはじめ、さまざまな賞を受賞している銘茶揃いだ。 この素晴らしいお茶を買って味わうことは、貴重な農法を未来へ残すことにもつながる。 通常よりひと手間かかる茶草場農法。香り高いお茶をたくさん味わって、日本の誇りを後世に残そう。
茶草場農法の銘茶たち

世界農業遺産「静岡の茶草場農法」
 東山周辺に根付く世界農業遺産「静岡の茶草場農法」。その魅力が詳しく紹介されているパンフレットが 「東山いっぷく処」はじめ各所で配布されている。ぜひ手に取って、環境と人々の暮らしが調和する農法を、 茶畑を見ながら体感してみたい。
茶草場農法パンフレット